9月1日(木)〜5日(月)各日19:00〜21:00
札幌のまちは、顔ともいうべき札幌駅前通りをはじめ、その姿を大きく変えようとしています。そこで、これからの札幌のまちを考える上で欠かせない、市電と公共交通、自転車と環境、生活都市の楽しみ、観光と生活者コミュニティ、時計台前仲通りを連夜のテーマにして、かつての札幌のまちの姿を写真と歴史談を通して知り、それぞれに詳しい人の話を聴いて、一杯飲みながら気軽に、札幌のまちの将来を考えて話しました。

●各日の歴史談 鈴木仁さん


現在の札幌は、地下鉄以外の公共交通があまり整備されておらず、街の中であっても近距離の移動が不便で、都心が面的な広がりを持って有効に使われていません。結果として自動車への依存が高いのが現状で、都心にも車が溢れ、歩行者が楽しめる街とはいえませんよね。私たちLRTさっぽろは、公共交通をまちづくりの手段として考え、現在の市電を活用してLRT(新型路面電車)へと発展させることで、都心を広く、便利に使う提案をしています。例えば、オーストリアの首都ウィーンは、札幌とだいたい同じ人口規模の都市ですが、地下鉄とあわせ、総延長240kmにも及ぶ路面電車網があり、公共交通は非常に便利です。値段も、市電、バス、地下鉄すべてに8日間乗り放題の切符が2,500円ほどで買えます。もちろん、交通だけを切り離して考えれば、経営は成り立ちませんが、税収など他の収益や、都市イメージのような都市にもたらす便益をトータルに評価して、交通を支えています。札幌でも、公共交通をまちづくりの手段として捉えて、公共交通によって都市を活性化し、その成果を公共交通に還元する、という仕組みが必要です。



自転車は、エネルギー消費効率が非常によく、CO2の排出など環境への影響が少ない乗り物です。また、都市内での近距離の移動時間がとても短く、移動者が占有する面積も自動車に比べてとても小さいことから、自転車は非常優れた移動手段と言えます。しかし、現在、法律を含めて自転車が走行する場所が明確になっていなくて、それに、車道にも歩道にも、自転車が走るべき部分がないのが現状です。そのよい例が「歩車分離式」と書かれた交差点の信号ですよね。自転車は基本的に車両ですから、自動車と一緒に渡ることになりますが、ドライバーの多くはどこまで理解しているでしょうね。札幌の街は平坦な場所が多くて、通年を通して考えれば、自転車を活用できる機会が多いはずです。地球温暖化防止の観点からも、自転車を交通手段の一つとして位置づけ、法律の整備、自転車レーンの整備、駐輪に関する問題の解決、公共交通機関との連携などを進める必要があります。また、走行の仕方や駐輪など、自転車に乗る「人」のマナー向上も求められます。


これまで、見たい映画を自分の手でという発想から、自主上映、エルフィンランド、駅裏8号倉庫、イメージ・ガレリオ、そして現在のシアターキノとやってきました。札幌を楽しくしたいという想いを実現する“場づくり”をしてきたと思います。街の魅力は、いろいろな“場”があって、古いものと新しい物が同居していること、ちょっとした胡散臭さと多様性だと思うんです。香港や山形の映画祭なんかは、会場が街の中に点在していて、作品を見るのに街を歩くことになるのですが、様々な空間に出会い、その街を感じられる時間がとても楽しい。こうして歩いてみると、坂道や小路の曲がり角のように、ちょっと隠れる場所の居心地がよいのですが、札幌にはそういったところが少ない。でも、今日の会場(北1条西3丁目・マリヤ手芸店)になっている仲通り(時計台前仲通り)なんて、札幌の特徴ですよね。札幌でも、複合商業施設など一箇所で全てが成立してしまうのはなく、歩いて回遊できる街になる方が刺激的です。それに、札幌は空気がとてもいい。街は、人の記憶がつくられる場所ですよね。


ある地域にやってきた来訪者が、路線バスや銭湯、市場、屋台、居酒屋、喫茶店などで、街の空気や地域の生活感に触れられること、これが住宅街観光の魅力です。ガーデニングをテーマに、オープンガーデンやカフェ、花とくらし展などのイベント実施で、2004年5月中旬から9月中旬で約一万人が来訪した恵庭市・恵み野は、この好例でしょう。こうした、観光事業に地域住民が参画する観光まちづくりでは、地域の観光資源の保全を図りながらも、来訪者に満足してもらい、かつ住民の不利益を防止する必要があります。住民のプライバシー保護と参画感を両立するために、中学校区、連合町内会区域、まちづくりセンター所管区域など、自転車で行動できる程度の地域で中規模なまちづくりを行い、そこで住民自身が、成熟した街の魅力を住民自身の手で磨き、それをさりげなく公開することが住宅街観光のポイントです。また、まちづくりセンター、地区センターなどは、ビジターセンターとしての機能を追加し、社会環境、生活環境を対象とした体験型観光を可能にする札幌版の都市型エコミュージアムも形成することが可能ではないでしょうか。


私はこの場所(マリヤ手芸店:北1条西3丁目時計台仲通り)で生まれました。小学生の頃、この辺りで事業をしていた人は、1階を店舗に、2階を住宅にしていたので、たくさん人も住んでいました。時計台前仲通りと呼ばれるこの仲通りにも、遊び仲間がいて、道路で遊んだものです。今は駐車する車で溢れていますが、当時は車はそれほど多くなかったし、何軒か隣に、コーヒーもアルコールも飲める“カール”という、いわばバルのようなお店もあって、石原裕次郎も立ち寄ったそうです。とてもよい雰囲気でしたし、グランドホテルに泊まったお客さんが、この仲通りを通って、時計台に向かっていました。このごろ、マンションがたくさん建って、都心に住む人が増えてきました。今はすっかり車中心になってしまった都心に、また人が戻ってきて、かつて市電に乗ってどこにでも行けた頃の賑わいが生まれればよいですね。
川口(対談者のコメント) “時計台前仲通り”は札幌の中でも、大変に古くからある仲通りで、明治34年の地図でも、通りの存在を確認することができます。そんな由緒ある通りも、自動車の増加とビルの大型化で、駐車場の入り口やビルの裏口が通りの多くを占めるようになってしまいました。もう一度、場所性を生かした仲通りにできれば、と考えています。